読む台湾茶

焙煎茶の新茶に注意!?

メールマガジン2008/11/1号より

さて、今号のコラムは『焙煎茶の新茶』です。秋の新茶を買う前に、これだけは知っておきましょう。

台湾人は新茶を飲まない?

秋冬は焙煎の効いたお茶が美味しいですね。新茶と聞くとすぐ飛びついてしまう方も多いと思いますが、中国茶・台湾茶の"新茶"の選び方にはちょっとポイントがあります。

日本人は新茶に敏感です。我々には緑茶を嗜む文化が古くからあり、また緑茶は基本的に新鮮なものほど美味しいので、日本人が新茶に惹かれるのは自然なことだと思います。

実は、本場台湾では日本ほど新茶がもてはやされることはありません。というのも烏龍茶は水分が低く安定性が高いので、品質の良いものはほとんど劣化しないからです。台湾では冬茶が好きな人は年中冬茶を、春茶が好きな人は年中春茶を飲むことが多いのです。

出せば売れる焙煎マジック

新茶の走りには、前季の売れ残りが再焙煎され"新茶"として出回るケースが多々あります。強く火を入れればばれないだろうと、別の品種を烏龍種(青心烏龍)として出すことも珍しくないのです。近年はより安価な中国産、ベトナム産の茶葉が好んで使われます。

わるい茶葉はもともとの質度(滋味密度)が乏しいだけでなく、走味(劣化)も著しく進行しています。再焙煎しても香りは表面だけで味わいはスカスカ、もちろん煎も続きません。

強めの焙煎を施すためには、発酵度が高く安定性に優れた毛茶(荒茶)の目利きが欠かせません。

これはよく誤解されるのですが、焙煎師に求められるのは飛びぬけた焙煎技術ではありません。むしろ毛茶の仕上がり、発酵度を客観的に正しく判断できる能力が全てといっても過言ではありません。実際の焙煎方法はそれに従って自ずと決まってしまうからです。

たとえば発酵の軽いロットを中焙煎にしようとしても、茶葉の滋味成分を破壊するだけで美味しさが引き出されることはありません。一方、発酵の強いロットはある程度強く火入れを施してはじめて茶葉の持ち味が発揮されるのです。

良品から消えてゆく

発酵には高度な製茶技術が求められますが、製茶後まもなく良いロットからバイヤーや焙煎師に引き取られていくので、次のシーズンまで良品が茶商や茶農の手元に残ることはないのです。

焙煎オーバーを"炭火焙煎"や"老茶"、渋みやえぐ味は"野生茶"などありがたそうな名前にすり替えて売られてることもあります。きれいな茶缶に詰められたギフト品は、保存性を高めるため強く火を入れます。これも残り物のはけ口となる可能性が高いと言われています。

店頭やネットでは秋の新茶が出てくる時期です

買った後にがっかりするのは辛いですよね。でも購入前にいろいろチェックできることはありますよ。正しい知識を持って臨みましょう。

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