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さて、今号は「台湾緑茶物語」です。
ちょっと長いので、読む前にお茶の準備を(笑)
◆三峡緑茶発展史
台湾茶と聞くと、多くの方が高山茶や凍頂烏龍茶、包種茶、東方美人などの半発酵茶(いわゆる烏龍茶)を連想するかと思われます。これらはたしかに長年にわたり日本をはじめ欧米、中国などに輸出されて親しまれきました。
では台湾緑茶はというと、いかがでしょう。全世界の緑茶のほとんどは中国で生産されていますが、ここ1、2年、生産量の少ない台北近郊の三峡緑茶が欧米市場で急速に知名度を上げていて、その勢いは中国緑茶をも上回るほどなのです。
台湾にも緑茶はあるの?と思われるかもしれません。日本統治時代の1919年には、台湾緑茶の輸出はすでに始まっていました。しかし当時は、「台湾の高品質な緑茶が各国に広く流通すると日本国内の緑茶業界に悪影響を及ぼす」との懸念から、緑茶の輸出は意図的に抑制され、1944年までの年平均輸出量は26トン程度に抑えられていました。その量は烏龍茶、包種茶、紅茶などの比にもなりません。
第二次大戦が終わり1949年ごろからは、台中関係の支障により、中国から撤退して(逃れて)きた軍人が中国本土の釜炒り緑茶を飲むことができなくなると、彼らはその生産地を台湾国内に求め、これが三峡における緑茶生産に火をつけることとなりました。
1948年に美商協和洋行が台湾支社を設け大量の釜炒り緑茶を生産し、主に北アフリカへ輸出するようになりました。これを機に台湾緑茶の黄金時代が始まり、輸出量は60年代には年6000トンを超えるようになりました。70年代に入るとアフリカ市場が大きく萎縮してしまうのですが、ちょうどその頃日本では日本茶の国内供給量が不足していて、その穴を埋めるために台湾の緑茶は今度は日本へ送られるようになりました。もちろん日本で親しまれている蒸茶製法による緑茶です。
これにより台湾緑茶産業は再び活況をとり戻し、輸出量は最盛期には年13000トン以上、製茶工場は大小300軒にも達しました。しかし、1973年からは減収に転じはじめ、輸出の中心もほどなく烏龍茶に取って代わられてしまったのです。
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◆茶葉の流通経路
三峡の歴史をひも解いてみると、1865年にはイギリス商人杜コが三峡ですでに調査を開始し、その3年後には福建安溪より茶樹を導入し植栽が始まっていました。当時は茶農は自宅の製茶場で荒茶段階まで加工し、それがいったん三峡郷内で集められて、淡水河を下り大稻[土呈](漢方薬街で有名な迪化街あたり)に送られ、精製・包装され、外国へと輸出されていました。
三峡は1949年に「産銷分離」を採用しました。これは、茶農が摘茶した茶青(未加工の茶葉のこと)をすべて三峽成福路の茶青交易市場に持ち込み、製茶工場長自ら茶青の色艶や軟らかさを確かめながら茶農と直接価格交渉を行うという珍しい方式です。2月の春茶から10月の秋茶が終わる頃まで、午後4時頃になると成福路では大きな布袋を背負った茶農の姿が毎日見られました。
現在では三峡の茶園面積は大幅に減少し、茶青交易市場も90年代初頭に閉鎖されてしまいました。若者の多くが大都市台北へ流出したことにより、茶園は荒廃し、また、人件費の高騰を理由に檳榔(ビンロウ)などの商品作物へ転作する茶農も多く見られました。最盛期には2500haあった茶園は250haにまで減少し、製茶工場はわずかに2軒残っているだけです。当時は賑わいが絶えなかった成福路も、今ではその面影すら感じられないほど寂れた町並みになっています。
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◆見直されつつある緑茶
不発酵の緑茶は、常飲することで老化防止をはじめ、抗酸化力アップ、がん予防、血脂肪蓄積防止、口臭予防、虫歯抑制、美白効果、紫外線吸収抑制、消化促進などの効果が近代の研究で明らかになりました。
さらに、緑茶に含まれるEGCG成分によるガン抑制効果や、虫歯になりにくい歯をつくる効果、食中毒予防効果など、医学会での緑茶の話題は尽きることがありません。今年の初夏には、SARS予防にも有効だという学者の一言で三峡の緑茶は飛ぶように売れ、その販売量は3倍以上に膨れ上がりました。
台湾大学の最新研究発表によると、茶ポリフェノールが脂肪酸合成酵素活性(FAS)や細胞内脂質合成を抑制することを証明し、茶のダイエット効果の根拠をついに掴んだとのことです。次号のNature誌に掲載されます。この実験は緑茶を用いて行わました。
今では中国緑茶、武夷岩茶など台湾にも多くの中国茶が入ってきて、消費者により多くの選択肢を与えています。しかも健康作用が明らかになるにつれて台湾人の緑茶消費量も大幅に増えてきています。
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◆台湾緑茶のブランド化
三峡の緑茶は、海山茶とも呼ばれています。これは1991年6月8日、当時の台北縣長が三峡の茶園を訪れた際に試飲した緑茶を絶賛し「從海濱到山頂、人人飲茶常保健康」(海から山まで全ての人の健康を維持してくれる)の意味を込めて命名したとされています。
チャの品種は、台湾特有の青心柑仔のほかに19世紀に中国より導入した甘種もありますが、両者とも中国とは気候も土壌も違う土地で作られるため形状や味わいが異なり、それによる商品の差別化が功を奏して、WTO加盟以来、高品質な台湾緑茶は太湖碧螺春にも勝ちうると豪語する人さえ多くいます。
あ、そうそう、緑茶は新鮮さが命ですね。たしかにその通りです。しかし、台湾の気候は高温多湿なため、台湾緑茶の製茶後の水分は2〜3%程度と低めに仕上げます(中国のものは一般に7%程度だそうです)。また、製茶後すぐに150gまたは300g毎に脱気包装するため保存性にも優れています。
冷水で淹れると甘みが強く、またカフェインの浸出が抑えられ不眠になりにくいです。淹れ方によって味わいも大きく変わりますので、1煎目はお湯で、2煎目からは冷水で、などのような愉しみ方もできます。
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参考資料:呉徳亮『台北三峡緑茶絶地大反攻』
<新新聞(The Journalist)第860号>
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*関連リンク: 明前碧螺春 明前龍井茶
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