読む台湾茶

秋はやっぱり中国茶

2023/9/26 更新

照りつける暑さは遠のき、爽やかな風が心地よく抜けていきます。

中国茶ファンが心躍る季節、秋を迎えています。

ところで、なぜ秋はお茶が美味しいのでしょうか。中国茶道の視点を交えて3つのポイントで解説します。

① 温かいお茶を欲する環境が整う

秋は恵みの季節。お米や柿や栗など、夏の太陽をいっぱい浴びて旨味を溜め込んだ食材が、秋に収穫期を迎えます。

寒暖差が大きくなってくることで、私たち人間も基礎代謝が上がってエネルギーを体内に摂り込もうとする機能が活性化します。夏場は冷たい飲み物を味わうこともなく飲んでいた人も、季節の深まりにつれて自然と温かいお茶が恋しくなってくるのです。

秋は食べ物がいっそう魅力を増し、人間はその恩恵にあずかろうと動き出す季節です。だから、秋はお茶が美味しいのです。

② お茶の温度変化が早くなる

台湾茶の茶器を見たことがありますか。小さいですよね。茶壺は日本茶用急須の半分くらい、茶杯はおちょこ(酒盃)ほど。台湾茶を初めて体験された方には、台湾茶の所作が「おままごと」に映るようです。

なぜ、台湾茶の茶器は小さいのでしょうか。それは、台湾茶は1回分の茶葉で5~20煎ほどお湯を注いで飲めるから。茶壺は小さいサイズで十分、ということです。

そして、茶杯が小さいのも意味があります。台湾茶は高温・中温・低温でそれぞれ異なる魅力を持っていますが、茶杯が小さいとお茶が早く 冷めるので、温度の変化がつかみやすくなるのです。

高温:熱々の台湾茶は、香りがよく立ちます。
中温:熱々から人肌近くにまで温度が下がると、お茶の味わいが最も観察しやすくなります。
低温:完全に冷めるにつれて旨味がいっそう凝縮し、液体はとろみを含んで、体に優しく浸透して いきます。

秋はお茶の温度変化が早まって、味わいが最も観察しやすい季節といえます。

③ ○○茶が飲み頃を迎える

実は、台湾茶はできたてが最も美味しい状態とは限りません。

完成から数ヶ月~半年で、飲み頃の入り口を迎えるケースが多く、台湾では「春茶は秋に飲め、冬茶は春に飲め」と言われるほどです。つまり、秋は春茶の魅力がいっそう膨らむ季節なのです。

『四季春』という品種を例に挙げましょう。できたての新茶は、青りんごをかじったようなジューシーで若々しい香味を持っています。これは新茶の個性として評価される一方で、人によっては「刺激が強すぎる」と感じられることもあります。

完成から半年ほど休まるとアクティブ感は落ち着き、舌触りは柔らかくなり、味わいは厚みを帯びてきます。『四季春』の軽火ならバレンシアオレンジのようなコクのある甘さ、中火ならネクタリンのような芯のある甘さが芽生えてきます。

飲みくらべに興味がある方は、同じお茶を2袋購入するとよいでしょう。1袋はすぐに開けて、もう1袋は半年後か1年後に封を切ってください。味の移ろいが楽しめますよ。

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食欲の秋、行楽の秋、芸術の秋。秋は心がうきうきする季節です。
ぜひ「中国茶の秋」も仲間に入れてあげてください。

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