みつこうこうちゃ・さんきょうちゃく

【特選】2023年早春摘み蜜香紅茶・三峡茶区

台湾緑茶の郷から、春一番の紅茶が届きました。

店主のコメント

金芽がきらきら輝きます。カモミールのような初々しい甘さ、ハーブ的な抜け感、きめ細かな味わいを楽しみましょう。ベイクドチーズケーキやスイートポテトなど、素材の持ち味を生かしたスイーツと相性がいいです。(2023年7月22日発売→9月21日完売)

完売しました

ある条件の時にだけ作られる特別な紅茶

早春摘みの蜜香紅茶が入荷しました。
東方美人との飲みくらべが楽しいお茶です。
でも、悲しいことに、蜜香紅茶と東方美人はいつも混同されがちです。
それではもったいない!
両者の違いに着目して蜜香紅茶の魅力を探っていきましょう。


●1.製法

東方美人は烏龍茶、蜜香紅茶は紅茶に属します。
大きな違いは発酵にあります。
東方美人は「浪青」によって発酵を進めます。
「浪青」とは、摘んだ茶葉の水分を少しずつ蒸散させて発酵を促していく工程です。
これは凍頂烏龍茶や高山茶など、他の烏龍茶と共通する製法です。

東方美人にはもう一つ、東方美人特有の工程があります。
「悶熱」といって、釜炒りした茶葉を布に包んで、茶葉に残った熱と水分を使って蒸らしていきます。
「悶熱」は東方美人の蜜香を引き立たせ、個性を決定づける重要な工程です。

一方、蜜香紅茶は紅茶ですので、一般的な紅茶と同じように全体を揉みながら発酵を促していきます。
蜜香紅茶の発酵は東方美人よりもはるかにシンプルです。


●2.蜜香について

東方美人はよく蜜の香りがすると言われます。
また、蜜香紅茶は名前の中に蜜香が入っていますね。
どちらもウンカに由来する蜜香です。
香りの系統も似ています。
東方美人も蜜香紅茶もウンカに噛まれた茶葉を摘んでいます。

ウンカというと夏の東方美人のイメージがありますが、今回の蜜香紅茶は早春摘みになります。
天候や茶園の立地にもよりますが、台北県三峡茶区では春先も度々ウンカが発生します。
ウンカに襲われて不意にしおれた茶葉は、若草の香りがする釜炒り緑茶(碧螺春)よりも、蜜香にフォーカスした蜜香紅茶として摘み集められます。
蜜香紅茶も天と地の恩恵によって生まれるお茶なのです。


●3.味わい

味わいは両者で大きく異なります。
簡単に言ってしまうと、東方美人は烏龍茶の味、蜜香紅茶は紅茶の味です。
東方美人には烏龍茶らしさがあります。

烏龍茶らしさとは一体何でしょう?
それは"活性"です。
活性は日本語に訳しにくいのですが、「波のように押し寄せる躍動的な味わい」とでも表現しましょうか。
フルーツポンチを想像してください。
一つひとつのフルーツの味を足し算しただけ、ではありませんよね。
複数の要素が支え合い、適度に交わり合うことで、複雑味を持った完成された味わいが形成されていますね。
活性があると、一見両立できなさそうな個性が絶妙にバランスしてくれます。

烏龍茶の味と紅茶の味、口内での味の膨らみ方に着目します。

東方美人は口当たりはおとなしめです。
舌の上に乗せると甘みがふわっと膨らみます。

蜜香紅茶は東方美人よりも線が太く、全体にボリューム感がみなぎっています。
入口時からボディの厚みを感じます。
とはいえ早春の紅茶なので繊細ではあるのですが、それでも烏龍茶の繊細さとは明らかに違います。

滋味と甘さのタイプは、蜜香紅茶はシンプルです。
あ、シンプルなんて言っては聞こえがわるいでしょうか。
では言い直しましょう。
輪郭がはっきりしていて、個性をつかみやすく、お茶の特徴を言葉に置き換えやすいのが蜜香紅茶になります。


●3.飲み頃

発酵系のお茶は飲み頃が気になりますね。
一体どのくらい寝かせるのが理想なのでしょうか。
実際のところ、新茶には新茶にかしかない良さがあり、旧茶には旧茶にしかない良さがあります。
どちらが美味しいかではなく、新茶と旧茶の個性の違いにフォーカスしていきましょう。

新茶は味わいが明るく、ジューシーな甘さがあります。
香り立ちがよく、香味に目をパッと見開いたときのような勢いがあります。
味の引きは軽快で、爽快な気持ちになります。

熟成にともなう変化は、東方美人と蜜香紅茶では若干異なります。
東方美人は液体になめらかさが加わっていきます。
香りの勢いは落ち着き、濃密で、湯気はゆっくりうずまくように昇るようになります。
飲み干した後に続く余韻は、時を重ねるほどに長く、深くなっていきます。
一つの目安として、10年寝かせると明らかに新茶とは別格の味わいが楽しめます。
どんな製茶技術をもっても作り出せない、時間だけが醸し出してくれる独特の風合いです。

蜜香紅茶は1~2年で重ためのボディが芽生えます。
舌触りは柔らかくなっても、こちらは心地よい爽快感は保ったままで、後味にはベリー系の涼やかな風味が加わります。
紅茶の味わいは、烏龍茶よりも安定感があって、どしっとしています。
茶杯の中でも温度変化にともなう味の移ろいは穏やかで、余韻もストレートです。

そういえば、一般に売られている蜜香紅茶は夏茶が多いかと思います。
夏茶の場合はいくらか休ませてから飲むことをおすすめします。
当店の蜜香紅茶は春摘みなので、今すでに飲み頃です。
カモミールのような初々しい甘さ、ハーブ的な抜け感、きめ細かな味わいを楽しみましょう。


●4.お茶請け

美味しいお茶を飲むと、美味しいお茶請けが欲しくなるのが人情です。
最後に、おすすめのお茶請けをご紹介しますね。

東方美人はかわいらしいいネーミングに反して、意外なほどに複雑味があるお茶です。
その複雑味に合わせて、素材同士の融合や一体感が楽しめるお茶請けを選んでみましょう。
ラム酒がほのかに香るレーズンサンドが好相性でした。
塩キャラメルなどコントラストがきいたスイーツとも波長が合います。

一方、蜜香紅茶の味わいは、正直にゆがみがなく広がっていくタイプです。
そのため素材の持ち味をいかしたお茶請けが合わせやすいです。
ベイクドチーズケーキやスイートポテトはいかがでしょう。
緑豆白玉しるこのさらっとした甘さともマッチします。

お茶のデータ
商品名称 【特選】2023年早春摘み蜜香紅茶・三峡茶区
みつこうこうちゃ・さんきょうちゃく
生産地 台北縣三峡鎮
茶樹の品種 黄柑
摘茶時期 2023年明前茶:3月中旬
茶園の海抜 200〜300m
発酵度 全発酵
烘焙程度
推奨茶器 磁器製の茶壺・急須、蓋碗、紅茶用ポット、マグカップ、グラス
茶葉の分量 茶壺・急須・蓋碗 → 5分の1弱
マグカップ、グラス → スプーン1杯
お湯の温度 95~100℃前後
時間の目安
(95℃)
茶壺、急須 → 50秒
蓋碗、紅茶用ポット、マグカップ → 蓋をして60秒
(2煎目 -10秒、以降 +20秒ずつ)
2023早春摘み蜜香紅茶・三峡茶区の2つの楽しみ方

100度の熱湯で淹れる → 香りが最も引き出される抽出法です。茶器を十分に温めて、しっかり蒸らしてください。

95度の湯で淹れる → 沸騰したやかんの火を止めて、泡が落ち着いたころの水温です。抽出時間を心持ち長くしてクリーミーな質感が立てましょう。

ワンポイントアドバイス

一般的な紅茶よりも煎がききます。できれば小さめの茶器で2煎目、3煎目と味の移ろいをお楽しみください。